ここの暁部隊から昭南島行きを中止して、「ボルネオのミリとマニラ間の油輸送」に変更の指令をうけ十月上旬ミリに向け出港した。
一旦、母国に別れを告げた乗組員たちは、どこに行こうが命のまま航(はし)るだけだった。
私は、一年前高瑞丸(こうずいまる)で波の静かなスルー海を度々航海していた。灯火管制下、満天の星座に浮かぶ南十字星を再び仰ぎ、ひたすらボルネオをめざした。
©2002 Kaneo Kikuchi
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