○ 羅津(らしん)・雄基(ゆうき)

羅津は朝鮮最北端の港で、三面が山に囲まれた羅津湾の東側に位置している。湾の入り口にある大草島が防波堤をなす天然の良港であが、羅津はもとは寒村にすぎなかった。

それに比べ、隣の雄基港は明治四十二年頃より新潟の漁夫が多数来航し、大正元年には朝鮮郵船会社が航路を開き、同十五年には念願の陸上輸送路の起点として図們東部線が起工された。

最盛期の雄基港は、清津・元山・釜山は勿論、大阪・横浜・函館・ウラジオストク間の定期船が就航して、北鮮の貿易と交通の一大拠点であった。

羅津港が雄基港に代わって軍事的に注目されはじめたのは、昭和六年九月の満州事変以後のことである。

 

©2004 Kaneo Kikuchi

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