豪胆な船長は、船橋で被弾状況を監視していたが、執拗なソ連機の波状爆撃から遂に船橋の下段通路に一時避難し、船員数人と輪になってしゃがんでいた。このとき私の隣にいた船長が、突如弾片で首に重症を負い「駄目だだめだ」と叫び、すぐ担架で陸軍病院に搬送された。
当然私も、ここで戦死するのは時間の問題であろうと覚悟せざるを得なかった。
©2002 Kaneo Kikuchi
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