船長不在の善後策
夕刻になっても、ついに停泊場とは連絡がつかず、在船の幹部で善後策を協議の結果、夜間は責任者の各科長と警戒隊員だけが船に残り、他の乗組員は陸上の適所に避難させ、犠牲者の抑止策を決めた。
私は無線部の長なので当然在船する覚悟でいた。ところが、陸軍の連絡将校として乗船していた後輩のナワ君が「僕が責任をとるから先輩もどうか退船してください」と、思いがけない助け船が現れた。
私は彼の勇気を謝して、小野三席通信士と暗号書バックを担いで避難することになった。
©2002 Kaneo Kikuchi
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