船友・阿部一男氏

恵昭丸に岩手出身の司厨員がいた。夜になるとコッソリ私にゼンザイなどを差し入れしたり、同県人として可愛がってもらった。

彼と別れて約三十年後のある夜、本塩釜駅のホームに、ピカピカに磨いた靴を履いた人物を見かけ、私はすぐ船乗りだと直観した。

どうも見覚えがある顔なので「阿部一男氏」か、と尋ねたら当人で、奇遇にびっくりした。仙台までの電車の中で双方の諸々の近況を交換したことである。

当時彼は塩釜のレストランに勤めていたので、以来しばしば彼の店で食事しながら昔話を楽しむことができた。  前項に出てくる私の前任者であった青森出身の石沢氏のことも話題にのぼった。

その後、彼は仙台の店に移った筈だが連絡が途絶えている。

©2002 Kaneo Kikuchi

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