○ あとがきにかえて

さきに刊行した小著「硝煙の海」は、知己、並びに関係団体や図書館等に謹呈するとともに、私のホームページでも公開いたしました。

ところがインターネットのお陰で、戦時中のクルー仲間が浮上したので早速接触。私の記憶欠落点の補完に協力していただき、ホームページ第二部(第一部は既刊本)で逐次公開しているところです。

実は最近意外な情報に接し、その真偽を追跡していました。それは、向日丸(むかひまる)と同日舞鶴に帰還した辰春丸に、羅津からの避難民が約千名便乗していたという信じられないような秘話でした。

このことを向日丸の仲間や、同じく羅津脱出の「さまらん丸」の方に感想を聞きましたら、あの空襲下で、千人もの便乗は至難との見解でした。

他方、舞鶴市の引揚者資料館にこの記録の有無を照会したところ、戦後の引揚げ第一船は十月七日釜山からの雲仙丸で、それ以前の記録無しとのこと。また、厚生労働省にも当時の資料確認を求めましたが、該当記録が無い旨の回答でした。

そこで、インターネットの検索エンジンを鋭意サーチしていたところ「大東亜戦史8(朝鮮編)」という文献があることを知り、早速図書館から借りて通覧したところ、今まで公刊戦史叢書に記録の無かった、当時の北鮮方面の軍・民の生々しい真相が記録されていたので、その要点を引用して小文を編み、ホームページに掲載した次第です。

前記の辰春丸に引揚者便乗のことは、この戦史には記録されていません。推察すればあるいは羅津の満鉄関係者ではないか?とも思われますが確認に至りませんでした。

なお最近、日本が敗れた真因等が多角的に究明されつつあることは共感を禁じ得ません。ご参考までに私が愛読した文献の一部を付記します。


・ 永野 護著 敗戦真相記 バジリコ
・ 大内健二著 輸送船入門 光人社NF文庫
・ 谷光太郎著 情報敗戦  ピアソン
・ 山本七平著 日本はなぜ敗れるのか 角川書店

 

©2004 Kaneo Kikuchi

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